トム・ピーターズ著「 デザイン魂」
アメリカで「経営グル」と呼ばれる著者が思いのまま、
すこし乱暴なくらい…デザインについて語り尽くします。
著者はデザインのプロではありません。
しかし、驚くのは本能的に感じとるデザインの善し悪し。
彼の視点は非常に鋭い。
デザインは限られたクリエイターが
閉ざされた世界で作り上げるもの(アート)ではなく。
生活の中に溶け込んで始めて完成されるのだ、と実感させられます。
さて「経営グル」「ビジネス界のカリスマ」が、
なぜデザインをとりあげるのか?
時代は激しく移り変わり、10年前の常識が全く役に立たなくなっている。
めまぐるしく変化する「激流の時代」。
そんな時代に、企業として何を主軸に置くべきか?
生き残りをかけて、他との差別化。抜きんでるには?
そのとき、彼に見えたのは「デザイン」でした。
アメリカの名だたる起業家、成功者に目を向けると
「デザイン」に集約される、と。
サウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケラハーは
紙ナプキンに「シンプルな三角」をなぐり書きした。
それが同社の航空路線を決定づけ、航空界ダントツの低コスト構造となった。
フェデラルエクスプレス創業のフレッド・スミスの場合。
「マンハッタンから郊外のニューアークへの急ぎの荷物を
はるかテネシー州のメンフィス経由で送る」という論文。
エール大学ではかろうじて及第点。
ここに「ハブ&スポーク・コンセプト」の原形があった。
いまや「美しいシステム」となり、貨物輸送に大きな変化をもたらした。
「シンプルな三角」も、「美しいシステム」も
「デザインされている」といえないだろうか?
そしてこんな話も。
「ハーレーダビットソンは、モーターサイクルを売っているわけではない」
どういうこと?「モーターサイクル」でなければ、何なのか?
ハーレーの大物ボスいわく
われわれが売っているのは、43歳の会計士が黒いレザーのライダースーツに身を包み、小さな町々を走り抜け、周りの人たちに恐怖感を与える、そんな力だ
つまり「経験」。
「スターバックスは、コーヒーを売っているわけではない。」
「マーケティングではなく、意味。ミーニングだ」
企業に意味付けをする「ブランディング」。これはデザインが占める割合が高い。
しかし、単に見た目、かっこよさなどの表面上の問題ではない、という意識がデザイナーには肝心。
深く物事を見つめ、理解したうえで、表現をする能力がデザイナーには問われます。
激流のなかで、杭を打ってよじ登り、流れから逃れられるとすれば
「デザイン魂」を注入できた企業だけなのだと感じます。
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